三和物産 株式会社

現場主導型マネジメントへの転換に立ちはだかった高い壁
~常務と営業本部長の苦悩と葛藤、試行錯誤の数々

「333(3年以内に、年間3万本のオリジナル棺を売って、三方良しを実現する)」というダントツ目標を掲げた会社に立ちはだかった大きな壁。常務と営業本部長は、なぜ、「まず自分が変わらなければ現場はチームにならない」と気づいたのか。そして、社員が涙した、差出人不明のお客様からの一通のメール。そのとき、三和物産に何が起きたのか? 会社は大きな壁を乗り越えるために何をしたのか。大好評の昨年に続く登場です。

三和物産 株式会社

常務取締役: 西河 誠人
営業本部長: 清水 吉樹

葬祭商社・三和物産の西河さんは、2年前に経営理念と人事制度を刷新した。変えれば会社はもっとよくなると思ったが、部門間の連携は悪いままだった。目に見える仕組みを変えるだけでは会社は成長しないと気づいた西河さんは、会社の目標に対して社員が主体的に取り組むマネジメントスタイルへの転換を図った。

まず、役員合宿では、普段話せていない各自の思いを話し、会社の60年の歴史を振り返った。自社の財産といえるものを探してたどりついたのはオリジナル棺「桜風」。そして、当時の実績の3倍の本数を販売するという、ダントツ目標「333」を設定。「バーバーバー」と呼び社内に浸透させた。「会社が持続的に成長するには事業と人・組織が一体で進化することが大事」と西河さんは言う。そのためには、トップダウンで仕組みや風土を変えることと、ボトムアップで出てくる「こうありたい」「こうしたい」という思いを相互理解によって統合することが必要。しかし、その取り組みがいかに険しいかを、続く清水さんが新人営業本部長の奮闘記としてお話ししてくれた。

営業本部長に着任したばかりの清水さんは、「333」の達成に向けて全支店の営業スタイルをルートセールスから提案型営業へ変えるための取組みを始めた。管理職層が集うミーティング、拠点ごとに営業部員が集うミーティングなど複数の拠点で始めた。初めは、「なんであいつが?」「時間の無駄」と批判されたものの、半年続けた結果、参加メンバーの反応も良くなり、変化の手ごたえを感じていた。しかし、実際は「1日拘束しやがって」と陰口をたたかれていることを知り、人間不信になった時期もあった。

メンバーが変わろうとしないため、活動中止にしようとしたこともあった。その時はメンバーから「変われという命令に従わないから怒っているのですね」と言われて気づかされた。人は人に変えられたくはない。なのに、自分は変われと強制していたのだと。

現状と理想のギャップが見つかることは良いことだと思っている自分と、ギャップは悪いものだととらえるメンバーとの違いが明らかになった時は、認識の仕方は人それぞれなのだと勉強になった。

「本気でない人がいるからやめよう」と言った時には、逆に「清水さんは本気で関わっていますか?」と問われた。自分も第三者に見えていたのかもしれない。本気の人は周りの本気を引き出すはずだ。それからはガツガツ行った。「あなたにはこうなってほしいと思っている」と伝えるようにした。

最近は変化の兆しも見えてきた。他部門との連携が増えたり、自発的に若手会が開催されたり。ベテランも奮起している。

オリジナル棺「桜風」の提案営業に手応えを感じ始めた頃、こんな出来事もあった。エンドユーザーとは接点がないにも関わらず、あるお客様から三和物産宛てに手紙が届いた。内容は、「葬儀を開くことが費用的に厳しい中、葬儀社が「桜風」を用意してくれたおかげで亡くなった若い娘の葬儀をあげられた」という母子家庭からの感謝の手紙だった。社員にとっては、自分たちの仕事に意義を感じる出来事だった。

清水さんには大事にしている二つのことがある。「リーダーが本気にならないと変化は生まれない」、「人は変わる」の二つだ。奮闘記を聞いたあとなので、より説得力がある言葉だった。

アンケートにお寄せ頂いた声(一部)

  • 思いを持って活動することの大切さが伝わってきました。高い壁がとてもリアルにイメージできました。そこを突破する人間力を感じられた。
  • トップダウンとボトムアップの結合等状況が自分の組織と重なる部分もあり、とても引き込まれました。自らが本気になることと、回数を重ねて、「変化させられる」のではなく、「変える」ことができるように根気強く頑張りたいです。