攻めの人事機能

私はグループのチェンジ・エージェント~グループを進化させる戦略人事機能~

メック・ヒューマンリソースは、三菱地所グループの経営・事業に基づく組織・人事の課題解決を大切にしている。同社は人事業務の代行だけでなく、「攻めの人事機能」のひとつとして組織開発をベースに企業の変革支援にも力を入れている。組織開発の取り組みを牽引する登壇者の寺輪氏は、日々、エネルギッシュにグループ内を飛び回り、チェンジエージェントとして、顧客と共に考え、悩み、組織進化のための取り組みを伴走している。

株式会社メック・ヒューマンリソース

人事ソリューショングループ チームリーダー 寺輪 俊希

メック・ヒューマンリソースは、三菱地所の不動産総合デベロッパーのグループ会社のうちの一社。人事業務を担うシェアードサービス会社である。三菱地所グループ内の各社の人事をトータルに、社員一人ひとりの現場の思いや悩みと向き合うことを大切にしながら支援している。

人事機能子会社の存在意義はどんなところにあるのか?親会社である三菱地所との絶対的な構造関係の中でどんな支援ができるのか?日々試行錯誤をしている熱い思いを寺輪さんは語ってくれた。

メック・ヒューマンリソースとしては、人事機能の中の「チェンジ・エージェント→人事戦略を効果的に実行するために必要な人材を育成し、組織の変革を促す」ということを大切にして支援を展開しているという。

最近の人事担当者や経営企画・経営者の方からの相談には、何が本当の問題なのか見えない、課題が曖昧でどうしようかと悩んでいる、という内容があるという。ひと昔前は、正解がある中で、こんな研修をしてほしい、この会社のこの人数の給与計算をしてほしいなど、オーダーがシンプルでわかりやすかった。今は、会社として変わっていく必要性はわかっているが、そのためには、どういうステップを踏んで、どういうふうに進めるのか。仕組みや制度を変えるとしたらどの順番なのか、などを一緒に描いてほしい、と言われることが多いそうである。

変革していくのはお客様の組織。でも、寺輪さんたちには、自分たちも当事者になったつもりで一緒に変革を触媒していき、信頼関係を築きながら伴走する役割を担っているという自負がある。その過程で生じる失敗や悩みについても話してくれた。

会社の方向性、事業の戦略にそって人事の戦略をどう描いていくか。ミッション、バリューについて考えるとどうしても事業寄りになる。すると経営幹部には受けがいいが、現場はシラケることがある。人事の施策の立案をし、現場に落とそうとしても、現場はシラケている。最大の敵は「現場のシラケ」。きれいな絵を描いても、現場が腹落ちしないと意味がないことに気づいた、という寺輪さんの話には質問もあり、賛同する聴講者も多かったようだ。

「シラケ」を乗り越えるにはビジョンを示すだけではダメ。浸透させる側と浸透させられる側のボタンの掛け違いは、「ビジョンが自分の仕事にとってどんな意味があるのか」などを、時間をかけて議論し、自分のものにすることで解消していくことが必要。そこに入って泥臭く地道につないでいく。経営者の考え方、現場の考え方を翻訳し通訳しながら経営と現場の信頼関係を築き、変革の伴走をしていく。それが自分たちチェンジ・エージェントの立ち位置。

粘り強く関わってきた寺輪さんの話は明解だ。

「チェンジ・エージェントの存在意義とは?」「チェンジ・エージェントの役割とは?」などには、図や絵の資料を使ってユニークでわかりやすい説明をしてくれた。

チェンジ・エージェントが持続的変化を起こすためには、一時的な外科手術的な要素(戦略、仕組み、体制、制度の見直し)だけでなく、漢方的な体質改善(価値観、思い、暗黙知の捉え直し)と同時に両面から支援する組織開発的なアプローチが必要である。

研修でコミュニケーションの施策を実施して社員の意識を変えようとしても、どんな魅力的な人事制度をつくっても、腹落ちがなければ意味がない。

経験から導かれた力強い言葉だった。

最後の「漢方薬で体質改善をするプロセスの中で、シラケに触れると心が折れそうになることはありませんか?」という質問には、「毎日折れています!何度やめようと思ったか」と明るく答えてくれた。

寺輪さんの積極的かつ粘り強い姿勢に、人事のチェンジ・エージェントとしての気概を感じさせられたプレゼンテーションでした。

アンケートにお寄せ頂いた声(一部)

  • 論理と感性をバランスよく使うことの大事さがわかりました。メタファーを活用されていましたが、これも論理と感性のバランスをとっているからこその表現ですね。別の見方をさりげなくインプットできるようにもなりたいと思いました。
  • シンプルなメッセージにて非常にわかりやすく、ご本人曰くの失敗例を含んだ具体的な事例が、実際に活用させて頂きたいところが満載だったところ。但し、実際にはどのセッションも選びたいところで、甲乙つけがたいです。
  • 現場のシラケに対してどのような工夫をされているか、どのような苦労をされているのかがよく分かった。現場は新しいこと、何かを浸透させられることを望んでいないという前提に立ち、外科手術と漢方による体質改善の併用、ビジョンをいかに解釈し現場に伝えるか、それを泥臭くやること、とても心に刺さるものが多かったです。